「十角館の殺人」の衝撃に勝るとも劣らない、館シリーズ第二弾。山奥に佇むヨーロッパの古城のような巨大な館、「水車館」には、仮面を被った主人と美少女が、ベテラン執事と通いの家政婦と共に、世間から離れてひっそりと暮らしていました。
主人の父親、藤沼一成は、幻視者と言われた不世出の画家でした。彼の死後、ある事故をきっかけに仮面の主人、紀一は一成の弟子が残した美しい娘、由理絵と共に巨大な水車館に住み始めました。その時に、紀一は父親の絵をその財力を使って全国からすべて集めて館に引き取ってしまいました。
その日から、一成の著名な絵画の数々は一年に一度だけ特定の招待客にのみ開放されることになりました。その絵画の開放日であった1985年9月28日、29日に起こった家政婦の不可解な事故死と一成の弟子であった正木慎吾の殺人、犯人と思われる招待客の一人の失踪、一枚の絵画の消失という謎多き出来事は、警察によって一応解決済みの事件として処理されたものの、不可思議な点をたくさん含んでいました。
その一年後、1986年9月28日、29日に、館の主人は、再び絵の公開を行いました。一年前と同じく嵐が吹き荒れる中、招待客の他に突然訪れたある訪問者は、一年前の事件の結末はどうも腑に落ちない、と言って推理めいたことを始めます。そこで明らかになっていく真実と、新たな殺人事件が皆を震え上がらせます。過去と現在の出来事が交互に描かれていく中、真実を象るピースが読者にヒントを与えつつも、混乱させていきます。
そして、「十角館の殺人」と同様に一言で読者に衝撃を与え、精緻で美しいトリックの真相が繰り広げられます。これぞ、綾辻行人さんの作品だ!という快感が味わえます。論理的に構築された犯罪で終わらない非科学的な部分でもゾクゾクさせるラストは、ホラーにも精通した綾辻さんならではの面白さです。
中村青司の館で起こるクローズドサークルのミステリー。今度はどんな仕掛けがあるんだろうってワクワクします。渋くて美しい綾辻さんのミステリーが本当に大好きです。新本格とかいう名前じゃなくて、これは私にとって「本格ミステリー」!
次作も楽しみです!!
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