東京タワー|江國香織|年の差男女が織りなす儚い恋愛模様

東京タワー

「世の中でいちばんかなしい景色は雨に濡れた東京タワーだ。」

江國香織さんのこのお話は、悲しげに淡い光を放つ少し古びた懐かしい印象の東京タワーとよく合っていると思います。あくまで、昼間の東京タワーではなく、夕方や夜の少し寂しげな東京タワーです。毎度思うのですが、江國香織さんの世界観、言葉選びはとってもお洒落。読んでいるだけで少し背伸びをしたお洋服に身を包んでいるような気分になれます。そして、「同情する、共感する、痛いほど分かる」と登場人物たちの心境が胸に刺さることが非常に多いのです。しかもごく自然な形で。

あらすじと感想

さて、この「東京タワー」というお話は、東京で暮らす二組の男女の恋物語です。19歳の男子学生と30半ばの既婚女性との恋愛模様を描いています。「17:00にフラニーで。」詩史からの電話を待つばかりの透と一見透など自分の世界の片隅にしかないように思える詩史。「いつも俺が振る方だ」と思い、あくまで肉体関係に終始する関係だと割り切る耕二とそんな耕二に夢中になり、盲目的な恋に落ちてゆく無邪気な喜美子。

対照的な二組の男女とも言えますが、共通するところもあります。

まず、男子学生は二人とも、普通の大学生から一歩引いたような考えをしており、少々斜に構えた物の見方をしています。大人びているともまた違うのですが、自分の世界を強く持っているという芯のある印象です。それは恋愛にも反映されており、自分と詩史さんとの関係は世間の何もかもと違うと考えている節や大人の女性は良い、そしてその一番の良さは無邪気さであると結論付けている耕二の考えからも伺えます。

また、二人の女性は、家庭を持ち、そこで暮らし、完璧な妻として振る舞ったり、何事もないようにお似合いの夫婦を演じつつも、そこには生きていない寂し気な様子をまとったりしています。

そして、四人に共通しているのは、皆心のどこかでは「孤独」というものと戦っているということでしょうか。江國香織さんの小説には、「孤独」がよく描かれており、人間誰もが抱えるそれの存在がもたらす不安な感情を繊細に描写しているものが多いように思います。

個人的にですが、私は詩史の纏う雰囲気がとても好きです…(笑)柔らかな印象を持ちつつも、いつも物事の本質を見据えているところや強さや笑顔の中に垣間見える寂し気な表情とか。海外から買い付けた雑貨を扱う図書館のような雰囲気を持つ自分の店を持ち、社交に勤しみ、音楽と詩を愛し、間接照明の淡い光に包まれた部屋に暮らし、毎晩夫とお酒を飲む。そんな生活を送る少し現実離れしたミステリアスなところも魅惑的です。(私がここまで惚れてどうするという感じですが…)透が夢中になるのも分かりますね!(笑)

「一緒に暮らすことと一緒に生きることは、必ずしも同じじゃない」

さて、二人の不純な恋愛関係はどうなってしまうのでしょうか。 どの登場人物も江國さんの手にかかると非常にお洒落。彼らは日常に生きていると分かるのに、どこか雑踏から離れた別の世界に住んでいるような美しさと儚さがあります。江國香織ワールドに何度でもトリップしたいな。

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