「すべて真夜中の恋人たち」。芥川賞作家、川上未映子さんが織りなす究極の恋愛小説です。ずっと孤独の中で生きてきたわたしでしたが、あるとき柔らかな雰囲気の控えめな年上のある男に苦しいほどの恋をします。儚く、寂しく、美しい恋とその結末。恋とは何か、愛とは何か、孤独とは何か。滑らかに優しく私たちに語り掛けてくれる現実的で、でも神秘的な小説です。
心に残る言葉
昼間のおおきな光が去って、残された半分がありったけのちからで光ってみせるから、真夜中の光はとくべつなんですよ。
そうですね、三束さん。なんでもないのに、涙がでるほど、きれいです。
1ページ目からこの美しさです…。引き寄せられてしまいますよね。
感想
わたしが、ゆっくりと三束さんに対して盲目的とも言える恋をしてゆく。それも闇の夜の光のように静かに、しかし、強く。
人と言葉を交わすことさえ上手にできず、自分の思いを伝えるのがとても苦手だったわたしですが、三束さんと出会い、好きになってゆく中で、どんどん心の声を形にしていくわたしの変化が分かります。
もちろん「恋」という観点でも大変楽しめる話なのですが、物語の終盤のわたしと聖との会話が一番印象的でした。聖の言葉に対して、本質的な質問を何度もぶつけるわたし。初めて、聞くだけで終わらずに傷つきながらも自分の本音を静かにぶつけてゆく様子。そして、ただひたすらわたしを責め、自分の正論をまくし立ててしまう聖。
「…みんながみんなあなたの常識で動いてるって思わないでほしい」
「わたし意地悪になっていつもこうなってしまうの、それでいつもだめにしてしまうの…」
二人は全く違う。でも二人とも孤独で。二人でさすり合いながら泣く姿がありありと浮かび、離れません。
そして、最後には、わたしは一つの大きな恋をして、聖もさらっと大きな決断をして、二人とも変わったんだんだ、そしてこれからも変わってゆくんだろうな、と思いました。
「すべて真夜中の恋人たち」何度も反芻してしまうタイトル。物語全体が真夜中に揺れる光のようなそんな素敵な小説でした!
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