マスカレード・イブ|東野圭吾|仮面を保つホテルマンと仮面を剥がす刑事が出会う前のそれぞれの物語

マスカレード・イブ

あらすじ

マスカレード・ホテルで連続殺人事件の共に立ち向かった、優秀なホテルマンの山岸尚美と敏腕刑事である新田浩介が出会う前のそれぞれの物語。

“ホテルにはいろいろな人間がやってくる。…彼らは皆、仮面を被っている。だから、ホテルマンは、決してその仮面を外そうとしてはならない。”

お客様が抱える様々な事情を詮索せず、いや、それを十分に理解した上で、仮面をつけたままホテルでの特別な時間を楽しんでいただけるようにするホテルマン。

一方、人と対峙するときには、疑いから入り、相手がつけている仮面、化けの面を剥がすために奔走する刑事。

一見正反対の理念を掲げる2人ですが、彼らには鋭い観察眼と謎に対する答えを追求し続ける好奇心という二つの共通点がありました。

二人のそれぞれの探偵物語を読んでいるような短編。そして最後には、二人の才能が知らず知らずのうちに織り重なり、事件解決へと繋がっていきます。マスカレードシリーズ第二弾。やっぱり一気読み必至の物語です!

感想

強くてずる賢い女性たち

本作には、ずる賢くて冷徹な本性を持ちながら仮面を被って人を騙す女性が何人も出てきます。そして、彼女たちは決まって美しく強くて聡明で、ミステリアスな雰囲気をまとっています。まさに、女性が憧れそうな女性です。

そんな彼女たちが仮面の下に計算高き冷酷な顔を持っていて、それを暴いていくのが、ゾクゾクっとして、本作のたまらない魅力だなと思います。そういえば、「マスカレード・ホテル」でも、そんな女性が出てきましたよね。女って怖いな、とつくづく思っております(笑)

哀れな人妻を演じて殺人を裏で操る女性に、大胆な殺人計画を考案し、巧みな話術で男を手玉にとる女、自分の私利私欲のための結婚を目指して大胆な恋愛をする女。皆迷いがなくて腹を括っていて潔い。

もちろん犯罪なんか実際起こしてはいけないことですよ。でも、その精神的な強さと美しさには憧れるものがあり、魅力的です。

2人の探偵が導く謎の解決への探求の旅

頭がいいのは犯人たちだけではありません。刑事の新田と、ホテルマン山岸の観察眼と推理力は、まさに探偵。しかし、読者と共に歩んでくれる探偵。

どのお話も、怪しい、理屈が合わない、という状況に早い段階からなり、読者は、その答えを知りたくてワクワクドキドキ読み進めるわけです。そして、二人の鋭い閃きと好奇心と行動力であっという意外な真相に辿り着くというエンターテイメント。

名探偵の推理を待つとか、どんでん返しとかとは違って、一緒にホテルや街を動き回りながら、お客さんや事情聴取の相手と話しながら、真相に辿り着くという面白さがあります。

聡明な2人が楽しい場所へと導いてくれる躍動感のある小説です。

仮面があるからこそ物語は面白い

私も、あなたもあなたの周りの友達も上司も家族も、皆それぞれ仮面を持っていると私は思います。

そして、複数の仮面を付け替えたり、時には、仮面を外したくなったり、恋人の仮面の存在を疑ったり。その仮面が邪魔でコミュニケーションがうまくとれないということもありますが、逆にその仮面があるからこそ人間として深みが出たり、自分の大切なものを守れたり、上手く自分の立場や役割を全うして組織を動かしたりできるという良さもあります。

そして人には仮面があるからこそ、小説は面白く、推理小説には意外な展開が待っています。本シリーズは、そんな仮面を被った正体を見破っちゃう爽快なお話。ぜひ読んでみてください!

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