その占いはきっとあなたの背中を押してくれる。読み終えたときには、きっと元気になれる、そんな一冊です。とっても軽くすらすらと読めるので、移動時間に読んだり、重めのお話に疲れてきてしまったときに読んだりするといいと思います。仕事や人間関係で疲れちゃったっていう人も、日々の癒しにぜひどうぞ。
あらすじ
元営業職OLが占い師に転身してルイーズ吉田と名乗り、ショッピングセンターの片隅で日々、人々の悩みに向き合い、占いをしてくれます。彼女の強みは営業職時代に養った人を観察する力!占いを始めるにあたって、もちろん色々な知識は身に着けたけれど、お客さんの話し方や雰囲気をよく見て話を聞けば大体何に悩んでいるか分かるし、何を言ってほしいかも分かる。図星です!と思わせることは簡単だった。はずなのに!?
どうしても振り向かせたい相手がいる、と言って、何度失敗してもめげずにルイーズの占いに通い詰める女子高生や、「お父さんとお母さんのどちらを選んだらいいと思う?」という小学生の男の子、「物事の終わりが見えてしまうんや」という関西弁で飄々とした風貌の大学生など、とてもルイーズの手には負えない人たちが現れます。
彼らには切実であると同時に愛すべき理由が隠されていて、占いの教本通りにも、ルイーズの営業力による鋭い判断の読み通りにもいかずに、ルイーズは困ってしまいます。
さて、ルイーズはどんな占いをするのでしょうか?ルイーズは、ちょっとしたきっかけ作りをして相手の背中をそっと押すと同時に、彼らお客さんのために試行錯誤する中で、自分自身の生活の中でのちょっとした幸せを見つけたり、日常に潜む大切なものに気付いたりします。
ルイーズの人生と占いに訪れるお客さんたちの人生にエールを送ると共に、焦ってばかりいる日々でも、ちょっと立ち止まって自分の周りをゆっくり眺めてみることで、読んでいる私たち自身も、ほっと一息つける作品です。
感想
占いに求めるものは?
あなたが占いに求めるものは何ですか?占いなんて信じないという人も多いと思いますし、私も普段全く気にしない方なのですが、「あなたは人懐こいようでいて実は殻の堅い人よ」とか「最近は、運気が落ちてきているせいか頑張りがなかなか実らないけれど、地味な積み重ねが3か月後に功をなすから辛抱の時よ」とかなんとか言われたら、すごく嬉しいんですよね。「あなたはこういう人」と言われるのってなんでこんなに気持ちいいのでしょうか。自分を誰かに認めてほしくなったり、自分に自信がなくなったりすると、やたらめったら心理テストとかやりたくなっちゃうんですよね(笑)
きっと私たちが占いに求めるのって、ほんとに得体の知れない自分自身のことを明らかにしたいというよりは、なんとなく自分の悩みの答えや自分が下す予定の決断は心にあるんだけれど、あと一押ししてほしい、だとか、打ち明けて自分を理解してもらいたいだとか、そういうものなんじゃないでしょうか。ちょっとしたカウンセリングのようなものですかね。
ルイーズ吉田の師匠、ジュリエ青柳も「大事なのは正しく占うことじゃなくて、相手の背中を押すことだから。」って言ってましたし。この小説の中で占いに訪れる人々も一人一人前を向いて生きるために、お金を払って占いに訪れるのでしょう。ルイーズはその意味で、すごくいい占いをしているなあって思いましたね。
平凡な彼との平凡な日常が幸せ
また、ルイーズは占いを始めて出会った男性と付き合い、同棲しているのですが、そんな“ぱっとしない平凡な”彼とルイーズとの日常もこの物語の魅力です。おしゃれなデートも楽しいけど、ちょっと疲れる。ダイエーで日々使うものの買い出しをしながらあれこれ話す休日が楽しい。そんな穏やかで幸せな日常にほっこりすること間違いなしです!
瀬尾まいこさんのほっこりした世界観漂う一冊。皆さんもユーモラスな登場人物たちにくすっと笑いながら、優しくあったかい気持ちになってみませんか?
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