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あらすじ
三度目となる結婚の失敗にもめげない、自分の幸せにとことん貪欲な女、るり子。幼い頃から今まで勉強も仕事もまともにこなし、仕事にも恋にも現実的な考え方を持ちつつも、自分にとっての幸せに疑問を持ち続けるクールな女、萌。
対照的な性格ながら5歳の時からずっと一緒にいる2人の生き様を真っ直ぐな言葉で爽快に描いた物語です。特に、20-30代の女性の方には圧倒的共感を得られる作品だと思います!第126回、直木賞受賞作です。
感想
悩める女の真っ直ぐな言葉に共感し、勇気をもらえる
この本を読んでいると、共感してしまう部分があまりにも多すぎて、途中で読むのをやめてしまおうか、と思ったほどでした。
「恋愛」というところには留まらない「女としての生き様」や「自分の価値」、「自分にとっての幸せの形」など、自分が日々心のどこかでモヤモヤと悩んでいるようなことを、どこまでも真っ直ぐで素直な言葉で表現されるからです。
あまりにも、直球でくるので避けようかという気にも一瞬なってしまいます。しかし、それでも最後まですぐに読み切ってしまった理由は、そんな、私がどうしようもない、と諦めてしまっているような悩みやモヤモヤに、この力強く生きる2人の女はどうもがき、どう立ち向かっていくのかがとても気になってしまったからです。2人だって、最強の女じゃない。例えば萌は、
勉強にも仕事にも、人にとやかく言われないくらい頑張って、時には「面白みがない」とか「性格がキツい」と言われても、平気な顔でいられるくらいの根性はあっても、いつも肝心なところで手にしたいものを取り逃してきたのは自分のように思える。―だいたい、私の幸せは何なのだ。私は何が欲しいのだ。
と悩んでいるし、今まで、強くあることで自分の弱さを押しつぶしてきたるい子も、
ついさっきまでに人生は何度もリセットできると踏んでいた。こと男に関しては尚更だ。なのにどうだろう、この私が、たったひとりの男も呼び出すことができずにいる。…ひたひたと、何かが押し寄せてくる。…こんなところで、ぐずぐずしていたら、その訳の分からない何かにがんじがらめにされてしまいそうな気がした。
と、一気に絶望を感じる瞬間があります。
けれど、彼女たちは負けない。自分の信念にとことん貪欲で、コケても倒れても、自分の幸せを掴み、育てようとします。その姿にとても勇気をもらい、モヤモヤも笑い飛ばせるような気がしました。
自分の幸せにとことん貪欲なるい子の生き様に惚れる
私は、自分が幸せになるための努力を惜しまないるい子という女性がとても好きです。そりゃ、こんな風にはなれないし、こんな極端な人がいたら、実際びっくりしてしまいます。それに、性格的には、萌にかなり近いので、萌に共感する部分の方が多いです。
でも、だからこそ、この「るい子」の同性に嫌われることなんて気にしない、自分の好きなものを手に入れるためならなんだってする、美しい女性としての武器をとことん行使するといった潔い性格に飽き飽きしながらも、虜になってしまいます。
そんなるい子の大好きなセリフがあります。
“ねえ、不幸になることを考えるのは現実で、幸せになることを考えるのは幻想なの?”
“先のことなんか誰にも分からない。幻想って言うなら、両方とも幻想でしょう。だったら幸福な方を考えていたいじゃない。その方がずっと楽しく生きられるじゃない”
“それにね、私は自分が幸せになれないなんてどうしても思えないの。だって、私、いつだって幸せになるために一生懸命なんだもの。人生を投げたりしないもの。頑張ってるもの。そんな私が、幸せになれないわけがないじゃない。”
現実を見なよ、と色んな人に言われて、怒ったり泣いたりしたるい子が、バーのマスターに言うセリフです。
かっこよくないですか!!
我慢を責任に転化して一端の大人になった気になる人がいると思います。というか、私もそうですし、多くの人がそうだと思います。そして、来るべき不幸に備えて、もんもんと思いながらも、自分の幅を狭めてしまうことを堅実的だと世間的にはいい、それが推奨されています。そして、私もそうしてしまっています。
もちろん、そうせざる負えない部分も多いし、るい子だって、一部分は、「現実的」なるものを受け入れます。でも、それでも、自分が幸せになるということを考え続け、そこにひたすら貪欲である生き方は本当に楽しそうであるし、その真っ直ぐな姿勢からは、本当に幸せを待つんじゃなくて、自分できっと掴むカッコいい女なんだな、と思います。
何が起こるか分からない人生での選択をとことん楽しむ萌
一方、萌の最後の決断もとっても魅力的です。“何でもきっかけね。何かを変えるときはいつも”と話す萌は、るい子のように幸せな未来をずっと想像して生きるというのとはまたちょっと違うけれど、これもすごく素敵な生き方だと思います。自分の置かれた状況を受け入れ、それを「良いきっかけ」と捉え、一度そう思ったらその人生がとことん幸せになるように生きようとする。
“人生って分からない。もしかしたら、他人には無謀なことに映るかもしれない…確かに色んな選択肢があると思う。その選択のどれが正しいかなんて、生きてみなければ分からない。…そのシンプルな気持ちが、たぶん、自分を一生励ましてくれるだろう。”
人生は何事も自分自身の決断の繰り返し。その選択した気持ちが思うようにいくとは限らない。けれど、自分の決断したときの真っ直ぐで強い意志こそが、その道を進む自分を将来励ましてくれるはずだと、萌は思うわけです。
他にも、皆さんが共感し、勇気をもらえる言葉がたくさん出てきます。きっとその言葉たちは、物語の中で読んでこそ、しっくりと胸に響くと思います!ですので、ぜひ一度、「肩ごしの恋人」をお手に取ってみてはいかがでしょうか。
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