レトロな内装が可愛い阪急電車の中でも全国的知名度の低い今津線。そんな片道たった15分のローカル線で起こる人々の日常に起こる小さな奇跡の数々。何気なくいつも乗っている電車の中に、風景のように佇み、普通会ったことも忘れてしまうような乗客たち。でも、そんな乗客一人ひとりにも悩みはあり、人生はあり、物語があります。
彼らの日々の人生という物語が交錯するとき、あなたの背中をそっと押してくれるような温かい奇跡が起こるかも!?この話を読んだあとにはほっこりと温かい気持ちになり、元気を貰えることでしょう。
私は有川ひろさんの「塩の街」の衝撃的なストーリー性と類まれなる世界観が大好きなのですが、「阪急電車」は打って変わって、日常の小さな奇跡を描くといった和やかな雰囲気のお話でして、本当に色々なテイストのお話を書く方だな、と感じます。そして、どの小説も本当に面白い!読んでないものもますます読んでみたくなってきちゃいました!
Contents
こんな方にオススメ
電車に揺られながらページをめくりたい方へ。
阪急電車に乗りながら読んだら、もう最高ですね(笑)
心に残る言葉
「討ち入りは成功したの?」
数々の名場面があるのですが、私は序盤の翔子という女性が復讐をし、それを終えた後、一歩前進して新しく踏み出してゆく場面がカッコよくて、弱くて、たくましくて大好きです。「潮時はいつにしようか。」と翔子が考えられるようになったきっかけとなる偶然電車で出会った老婦人の長い人生経験からの言葉もとても心に染みます。
感想
阪急電車を利用する人々の恋や仕事や友情など、それぞれの人生が交錯して、やがて明るく希望に満ちた方向に進んでいくというような物語。主人公が何度も変わるので、短編のようでもありますが、登場人物たちは一本の路線を通してかかわり合ってゆくので、一つの長編と言えます。
「乗客たちがどんな物語を抱えているか―それは乗客たちそれぞれしか知らない」
「人数分の物語を乗せて、電車はどこまでもは続かない線路を走っていく。」
同じ電車に乗り合わせ皆が違う物語をもっていて、緊張していたり、ルンルンだったり、何か大きな決断を実はしていたり。そんな風に想像すると、不思議で、面白くもあります。まあ、実際のところ、こちらの想像と本人の抱えるものは違うに決まっていますが、妄想は面白いですよね!(笑)
このお話では、ローカル線だから、というものあると思いますが、信じられないくらいに人々が関わっていくので、「こんなこと実際あるかよ!」というのではなく、いかにも小説の中の世界って感じで大好きだ、と思っちゃいました。お話の中でしか起こらないようなことが起こるのが本の一つの楽しさであるので!
この本は、明るい展開のお話ですし、日常の延長にある感覚の物語なので、ライトに楽しく読めます◎
私は、気分が落ち込んでいるときに重い本を読んで、さらに自分の悩みが迷宮に入ってゆくということを繰り返してしまう癖があるのですが(笑)、阪急電車は心を温かく前向きにさせてくれるので、私に優しい本でした!
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