ドミノ|恩田陸|抱腹絶倒のスピーディなドタバタコメディ。

ドミノ

あらすじ

“人生における偶然は必然である”

 

ドミノは、ある日の東京駅での数時間の様子を27人と1匹の視点から描いた超スピーディなドタバタコメディです。

 

ある子役は舞台のオーディションで薬を盛られ、過激派組織は東京駅で爆弾爆破について画策し、ミステリー研究会の学生たちは時期幹事長を巡る争いに心を燃やし、保険会社勤務の部長はどうにか締め切りに間に合うようにと、契約書類を死に物狂いで運ぶ。

 

他にも、大人気ミステリー映画監督に、俳句にハマる元警察官、ハッタリが得意な青年実業家など、すべての登場人物のキャラが立っていること、立っていること(笑)

 

無数の人間が行き交う東京駅で、普通は今後一切関わらない、それどころか、その日だって自分の背景にしかなっていないはずの人々の人生が交錯し、繋がり、奇跡が起こる。その瞬間を描いた密度の濃い物語です。

 

それぞれの登場人物たちは、ピンチを切り抜けることができるのか。この偶然が、必然が、幸福であれ!またとない赤の他人たちがドミノ倒しで事件を巻き起こし、また赤の他人に戻っていく。

 

クスリと笑わずにはいられない恩田陸さんのジェットコースターみたいなエンターテイメント。ぜひ、思う存分楽しんでくださいね!

 

感想

登場人物が多すぎて楽しい

376ページの小説の中に27人と1匹の登場人物が描かれているという忙しさがまず楽しいです。しかも、一人の視点から描かれているのではなく、それぞれの視点から物語が進んでいくのが恩田陸さんならでは。

 

恩田陸さんの小説っていつも複数の登場人物の視点から描かれるので、同じ事象なのにそれぞれの捉え方が違うし、見えているところや知っている情報、直面している課題の種類が異なるから、その矛盾が人間らしいし、実際の人間関係をよく描いていて面白いんですよね。

 

それがミステリーだと、真実は一つとはいっても、解釈がそれぞれ異なるから、真相が最後まで分からないのが不穏でワクワクします。

 

今回も、東京駅がパニックに陥っている様子が、多くの人物の視点から描かれ、色んなところで矛盾して、色んなところが別の解釈で繋がって、偶然が必然になって、最後には思いがけない奇跡が起こるというドミノ倒しが傍から見ている読者にとってはもどかしくも面白い。

 

訳が分からないまま、いつのまにかある他人の影響を受けて自分の今の行動が起こっていたり、身に降り掛かっている災難は、どこからか巡り巡ってきたものだったりする。

 

そのありそうでなさそうな、なさそうでありそうな偶然の楽しさをこの多すぎる登場人物たちそれぞれを個性あふれるキャラとして巧みに生かして、私たちに伝えてくれる恩田陸さんって何者なのでしょうか…。

 

人の数だけ人生がある。雑踏の中の人々の生活が愛しい

マンションの隣に住んでいるのに一度も口を利いた事がない。電車に乗っていても自分の世界と区別して関わることはない。そういう人間関係が現在の日本、特に都市部では当たり前です。

 

別にそれがいいとか悪いとかいうわけでありません。もしかしたら、「昔はもっと人と人が支え合って…」という声もあると思うし、もちろんいちいち他人と関わるなんて疲れてしまいますから、都市部であればあるほど意識的に他人に無関心になるのは快適にストレスがなく生活するためには必要なことでないかとも思います。

 

ただ、この小説を読み、雑踏の中をすれ違うそれぞれの人々が私と同じ人間で、皆何かを抱えていると改めて思い、みんなの生活が愛しく思えてきました。

 

人の数だけ人生があって、それぞれに悩みがあって、ピンチのときもあって、会いたい人がいる。自分の人生の主人公として生きている無数の人々が周りにいると思うと、なんだか勇気づけられるし、顔をほころばさざるを得ません。

 

そして、そういう人たちが一度にあんなにも行き来する東京駅の熱量って実はとんでもないものだ、とんでもない場所だと驚いてしまいます。分かるでしょうか、この感覚…(笑)ドミノを読んで理解してくだされば幸いです(笑)すみません、基本頭がおかしいので(笑)

 

自分だって偶然のドミノ倒しに巻き込まれているかも?

東京駅で、27人と1匹の行動が思いがけず影響を及ぼし合って、本当に思わぬ方向に物語が進んでいくのですから、こんなこと現実にはないじゃん!と思うかもしれません。でも、自分にもそんな奇跡が起こっているのか?、偶然が巻き起こした一連の出来事に知らぬ間に巻き込まれていたことがあるのでは?なんて思うとワクワクしてしまいます。

 

超スピーディなドミノ倒しが巻き起こすエンターテイメント。ぜひ、楽しみながら読んでみてくださいね。

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