謎解きはディナーのあとで|東川篤哉|令嬢警官と毒舌刑事が贈る笑えるミステリー

謎解きはディナーのあとで

「謎解きはディナーのあとで」の小説は、シリーズ三作品と、筆者自選の傑作三篇に書下ろし一作品を加えたベスト版、「風祭警部の事件簿」という副題のスピンオフ作品、映画版を小説化した作品の全6作品からなります。

本作は、2011年本屋大賞を受賞し、櫻井翔さんと北川景子さんによってドラマ化、映画化もされた懐かしの大人気ミステリーです。宝生家のお嬢様であり、日々不可思議な殺人事件に四苦八苦する警察官でもある宝生麗子と、その忠実な執事であり、抜群の推理力と毒舌発言で麗子を驚かせ、怒らせる影山の掛け合いが楽しいポップなミステリーです。

「ひょっとしてお嬢様の目は節穴でございますか?」「クビよ、クビ!絶対クビ!」東川さんお得意の軽快なタッチで描くクスリと笑わずにはいられない楽しいミステリーの短編集。老若男女問わず、すべての人にオススメです!

謎解きはディナーのあとで①

「第一話 殺人現場では靴をお脱ぎください」では、アパートの一室で、ブーツを履いたまま、余所行きの恰好のままで女性が絞殺されていた事件に麗子と風祭警部が挑みます。「失礼ながらお嬢様――この程度の真相がお判りにならないとは、お嬢様はアホでいらっしゃいますか」影山の毒舌な突っ込みが炸裂する爆笑ミステリー&コメディの幕開けです。

「第二話 殺しのワインはいかがでしょう」では、ワインに毒を盛られて殺された獣医の院長の犯人を見つけ出します。傍から見ると、それは自殺のようにも受け止められましたが、ある証拠から、他殺である可能性が出てきます。小さな疑問を少しずつ解決していくことが事件突破の近道なはず?

「第三話 綺麗な薔薇には殺意がございます」では、大邸宅にある美しい薔薇園に眠るように死んでいた美女の殺人犯を捜すお話です。どうしてその女性は殺害現場から薔薇園へ運ばれたのか。そこに死体を置く意味とはなんだったのか。消去法で犯人を影山が絞り、真相に辿り着きます。

「第四話 花嫁は密室の中でございます」では、同じく社長令嬢という立場で、交流の深かった後輩の自宅での結婚式に麗子が赴き、そこで思いがけず殺人未遂事件に遭遇してしまうお話です。密室で起こったこの事件の解決の糸口を些細な言動から閃いた影山の視点の鋭さに唸る展開となっております。

「第五話 二股にはお気を付けください」では、マンションの一室で男の全裸死体が見つかります。男の交際関係から浮かび上がってきた4人の女性の中に犯人はいるはずだが、不可思議な目撃証言に惑わされ、犯人を絞ることができません。影山が示した意外なトリックとは?いや、痴話げんかの縺れってほんと恐ろしい。

「第六話 死者からの伝言をどうぞ」では、死体の元に残されたダイイング・メッセージとまるでアリバイ工作をするように二階の窓から投げ込まれた凶器のトロフィーという二つの大きな手掛かりから真相を探ります。死に迫った被害者が最後の最後にダイイング・メッセージを残すなんてことは推理小説家でもない限りやろうとしないはずですよね。そんな風に考えていたら、あっという結末に。影山が執事として体を張る姿もカッコいいですよ。

 

「宝生家の意外な愛情」で、物語は締めくくりとなります。愛情も深すぎると変な方向に行ってしまいますからね。くれぐれも皆さん、お気をつけて。

謎解きはディナーのあとで②

「第一話 アリバイをご所望でございますか」では、立川のある雑居ビルで発見された女性の刺殺体の犯人を調査します。目撃者の証言により犯行時刻が大幅に狭められるものの、容疑者のアリバイは複数人によって証明されてしまいます。と、影山はこのアリバイの不可解な点に気付き…。さあ、影山によるアリバイ崩しの結末やいかに!?

「第二話 殺しの際は帽子をお忘れなく」では、バスタブで眠るように死んでいる女性の殺人犯を、ごっそりと犯行現場からなくなっていた被害者の帽子のコレクションという手掛かりを頼りに見つけ出すお話です。麗子は、御用達の帽子屋へ赴き、相談をするわけですが、帽子が似合うと店主に褒めそやされ、得意になってまんまとカモになってしまう姿がとてもおちゃめで可愛いです(笑)事件の方は、帽子の思いがけない用途に気づくことにより解決に向かいます。

「第三話 殺意のパーティにようこそ」では、真っ赤なドレスにエメラルドのネックレスをつけてパーティへ出かけた麗子が、会場の屋上で、ある女性が倒れていることを発見するというストーリーです。目撃証言により、犯人候補の服装や人間関係が絞られていきますが、そうするとなんと犯人が一人もいなくなる!?ここでも知識豊富な執事影山が、名推理を披露。おてんばな麗子の行動にもクスっと笑えるお話です。

「第四話 聖なる夜に密室はいかが」では、ロフト付きの家に住む一人暮らしの女性が転落死しているのが発見されるところからスタート。クリスマスイブの日に殺人事件の調査を余儀なくされた麗子と風祭警部は、事故死として片づけたかったものの、密室なのに他殺の可能性が浮上!雪が降り積もる地面には犯人の足跡は見当たらず…。さて、聖なる夜に予定があるという影山は推理に協力してくれるのか!?

「第五話 髪は殺人犯の命でございます」では、腰までかかるような美しく艶やかな黒髪が自慢であった女性が、男の子のようなショートカットで遺体となって発見されるところから始まります。なぜ殺人犯は、髪をわざわざ切る必要があったのか。それには、少し前の男性の事故死が関わっていました。皆さんにはこの謎が解けるでしょうか?

「第六話 完全な密室などございません」では、有名な画伯のアトリエで、画伯が何者かに刺されているのが見つかります。明らかにこれは密室ではないですか!!という状況の中、眠り姫が描かれた大きな壁画と床に倒れていた梯子が謎の解決の糸口となります。画伯の事件というだけあって、アートな結論になりますよ。

 

最後は、「忠犬バトラーの推理?」で、またもお父様から麗子に送られてきたわんこ、バトラーが登場!麗子のいるところには、いつだって謎があります。

第二巻も子供からミステリー好きの大人まで、読者が謎解きを楽しめる一冊となっています。

謎解きはディナーのあとで③

「第一話 犯人に毒を与えないでください」は、農家のお屋敷で起きた主の毒殺事件の犯人を見つけ出すストーリーとなっています。水の入ったペットボトルと傍らに置かれたコップ、転がる青酸カリの入ったケース。一見自殺にしか見えないこの事件の手掛かりは一匹の猫と輪ゴムでした。うーん、これは影山のヒントなしには見抜けませんでした!(笑)

「第二話 この川で溺れないでください」では、麗子と風祭警部は、河川敷で発見された溺死体の調査に乗り出します。彼に資金を提供していたという遠縁?の男が容疑者と浮かび上がります。この話はヒントが散りばめられていて、ミステリー好きの方は推理できちゃうと思います。たくさんカムフラージュがあって面白かったです。

「第三話 怪盗からの挑戦状でございます」では、麗子宛に、『明日午前零時、宝生家に眠る秘宝《金の豚》をいただきに参上する。せいぜいご用心を。怪盗レジェンドより』という手紙が届くところから始まります。この作品は他の作品とは一味違ったストーリーで、また面白いです!麗子の父の傍若無人で、でも憎めない性格も垣間見える愉快なお話となっています。

「第四話 殺人には自転車をご利用ください」では、ある古い家屋の食堂で、老女の死体が子供用の椅子に縮こまった状態で座らされているのが発見されます。容疑者は元競輪選手。ロードバイクで犯行現場へ走り抜ける道中の目撃証言は出ているものの、時間的にどうにも合わない。ミステリー好きの人なら「あー、これね!」と思うトリックを見抜き、影山が見事解決します。

「第五話 彼女は何を奪われたのでございますか」では、私立カトレア大学の女子大生が工事現場で絞殺されてしまいます。白いワンピース姿で、黒髪ロングと眼鏡の似合う美しい文学少女の悲惨な姿。彼女は殺されたその日、少し様子がおかしいようでした。恋する少女に起こった悲劇をあなたは見破れますか?

「第六話 さよならはディナーのあとで」では、殺人事件のあった家の付近で多発していた盗難事件と家の中の人々の諍いが、どちらも、事件解決に外せない要素となっています。それを抜け漏れなく、影山が推理しちゃいます。タイトルの「さよなら」の意味が気になるお話ですね。

 

「探偵たちの饗宴」では、コナンくんと麗子、影山の夢の饗宴、共演が見られます。小学館の文庫だから味わうことができるなんと贅沢な体験でしょうか。麗子と影山の関係が上手く掴めないコナンくんがとっても面白かった!

謎解きはディナーのあとで-風祭警部の事件簿-

あらすじ

本作は、短編集だった前三作品から変わり、一つの物語となっています。しかも主人公は、キザで、人並みかそれ以下の推理しかしないのにいつも自身たっぷりなところが麗子を苛立たせる麗子の上司、風祭警部です。

物語は、風祭警部がワールド・ポリス・チャンピオンになってもてはやされているところから始まります。風祭警部は温泉旅行への招待券をもらい、彼の熟練メイド、光川と共に山奥の温泉旅館へ赴きます。その温泉郷には美人が沢山いるということで乗り気だった警部ですが、こんなときに密室殺人事件が勃発!

どうやら、旅館を経営する一族にはドロドロの後継者争いや情事の揉め事、一族に伝わる呪いなど複雑な事情がたくさんあるみたいです。

さて、いつも影山と麗子に助けられてばかりの風祭警部は事件を解決できるのか?面白可笑しいだけで終わらない感動の結末やいかに!?メイドの光川との名コンビにもご期待ください!

感想

今までの短編では、トリックの仕掛けを発見するというクイズを楽しむような感覚で楽しんでいたのですが、今回はそれだけでなく、ストーリーとして作りこまれていた点がワクワクして面白かったです。人間同士の妬みや嫉妬の感情のぶつかり合いや表の顔、裏の顔に騙され合うところなど、山奥の温泉旅館という狭い世界だからこそ起こりそうないざこざが謎解きを一層豊かにさせていました。

そして、これまでなんとなく脇役で、キャラは立っていたけれどあまり好印象じゃなかった風祭警部が主人公で、どうなることかと思いましたが、あのキャラがむしろ好きになりました。光川に紳士になるようにと「褒めて伸ばす」教育方針で伸び伸びと育てられた風祭警部は、周りの人がなんと言おうと、どんな目で見ようと自分の信念を曲げずに、自分が思う「ジェントルマン像」を貫き通すところが強くてカッコいいんです。勿論だめだめなところも多いけれど、愛されるべきキャラクターだなーって思いました。

謎解きはディナーのあとで-ベスト版-

こちらは、作者の激押し作品三篇と書下ろし一遍が入った短編集です。一冊試しに読んでみたい!という方にはオススメです。また、書下ろし作品「殺意のお飲物をどうぞ」もとっても楽しい。「お嬢様の目を節穴ですか?」と影山の懐かしい辛口コメントが炸裂します。舞台はある国会議員のパーティ会場。麗子はおめかしして、女子高時代の旧友とよもやま話に興じるも、直後に毒殺事件が起こる!?影山の鋭い観察眼と風祭警部の勢いだけの推理にご注目です。

謎解きはディナーのあとで-映画編-

あらすじ

麗子は刑事としての多忙な日々からようやく有給休暇をとり、影山と共にシンガポールへの豪華客船の旅に出ることに。エステに美味しいお料理に、パーティにと楽しみがいっぱいだったはずなのに、聞きなれた声と場違いな白スーツが目に入ります。国立市とシンガポールの友好のシンボルとして贈られる予定の超高価な「Kライオン」を、この客船に乗り込んでいるらしい有名な窃盗犯から護衛するために風祭警部も同じ船の中にいたのです。この二人がいて、窃盗犯がいるという噂があれば、それは事件が起こるに決まっている!せっかくの休暇は、豪華客船内で起こった連続殺人事件の捜査によって台無しになってしまいます。長いひげを生やし、杖をついて歩く怪しい男の正体とは?真犯人が本当に手に入れたかったものとは?切ない結末と影山と麗子の名コンビが今回も読者を楽しませてくれます。

感想

3000人の人々を乗せた船の中に凶悪な殺人犯がいる。犯人の命令により、出発地点に戻ることも、到着地点で乗客全員の捜査を行うこともできないため、殺人が起こってからシンガポールに到着するまでの7日間の間に犯人を見つけ出さなければいけないという状況がなかなかスリリングで面白かったです。

また、今回はいつにもまして、主、麗子のために奔走する影山の姿が印象的でした。「コイツは何者なんだ!」と言いたくなるくらい頭は切れるし、表にはあまり出さないけれど麗子を守り抜く強い意志と愛情が感じられるしでとっても感動しました。そして、お茶目な部分もあって、すごくかわいかった(笑)特に、着ぐるみ「ブラックチャックくん」になってみたくて実際になってしまうというところが可愛すぎました(笑)もちろん、いつもの毒舌も健在。「失礼ながらお嬢様…」の後は、今回は何が続くのでしょうか。読んでからのお楽しみですね。

短編では味わえない感情移入をしてしまうような切ない結末も見どころです。ぜひ、こちらの「映画編」も読んでみてくださいね!

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