葉桜の季節に君を想うということ|歌野晶午|巧妙な叙述トリックとどんでん返し。読み直したくなること必至のミステリー!

葉桜の季節に君を想うということ

今回は、日本推理作家協会賞、本格ミステリー大賞、このミス第一位と、あらゆるミステリーの賞を総なめにした歌野晶午のミステリー、「葉桜の季節に君を想うということ」をご紹介します。

まさかの叙述トリックに、え?え!?と後半かなり驚かされ、どんでん返しまで待ち構えるというお話です。とはいえ、ハードボイルド要素のあるお話で、ガチガチの探偵小説という感じではないので、ミステリー初心者にもおすすめの作品となっています。

あらすじ

明智探偵事務所(なんでもやってやろう屋)で、以前働いていた将虎は、フィットネスクラブ仲間から、家族が悪質な商売に騙されているという相談を受けます。一度受けたからには絶対に最後までやり遂げる気質の将虎は、あらゆる手を使ってその正体を暴きにかかります。

丁度そのころ、駅で飛び降り自殺を図っていた麻宮さくらという女性と運命的に出会い、彼女に恋をします。彼女と重ねるデートやちょっと不思議で和やかな会話のシーンと、壮絶な探偵としての調査のシーン、それから将虎が働くパソコン教室の生徒さんに纏わる謎を解くシーンや過去の探偵としてのシーン、悪質な企業に騙され続ける女性のシーンが平行して進んでいきます。それが最後の最後でしゅるしゅると見事に繋がり、収束するのです。あの時のあれは、そういうことだったのか!と伏線とも気づかない伏線の数々が綺麗に回収されます。タイトルも素敵だと、最後になって思います。「もう一度読み直したい!」と必ず思わせる名作です。

感想

とにかく「騙されたい」という欲でいっぱいの方、ぜひ読んでほしいです。私は、まんまと騙されるのが好きなので、「え、そういうこと!?」とニマニマしました。気持ち悪くてすみません(笑)この種の最後にトリックが明かされたりどんでん返しが起こったりするもので、そこに至る過程はさほど面白くないといったものもあるような気がしますが、「葉桜の季節に君を想うということ」は、過程もドキドキして楽しめました。

将虎は探偵時代に「とにかく観察しろ。意味は考えなくていい。見たことをそのまま頭に叩き込んでおけ。そうすればおまえの頭がそのまま貴重な資料となる。」という言葉をボスから頂戴していたのですが、その言葉通り、凄まじい行動力で資料をかき集め、最後にピースが綺麗にはまっていく様は圧巻でした。

将虎はその調査するところもカッコいいですが、「人をもてなし、いい気分にする接客」や「おにぎりをふっくらと綺麗に握る技術」を特殊能力で誰にでもできることじゃないというような優しさがあり、ヤクザのような義理堅さがあり、人間としてとても尊敬できるなと思うんです。(もちろん尊敬してはいけない部分も多々あるけれど…笑)

シーンとしては、将虎が夜中、悪質業者のオフィスに忍び込み、大逆転を遂げる場面がなんとも爽快で好きです。”FUCK YOU!”って(笑)

平然と嘘をつく将虎。それは悪ふざけの嘘なのか、何か策があっての嘘なのか。そこも見どころです。あまり言ってしまうとネタバレになってしまうので、この辺にしておきます。皆さん、ぜひ歌野晶午さんにまんまと騙されちゃってくださいね!(笑)

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