イブの憂鬱|唯川恵|仕事も恋もブルーな29歳の等身大の女性がもがきながらも一歩踏み出すお話。

イブの憂鬱

あらすじ

とってもブルーな気分で29歳を迎えた真緒。仕事では、それなりに上手くやってきたはずなのに、職場の後輩からの思いがけない陰口にショックを受ける。突如リストラの対象にまでされて辞めてやろうかと思うものの、「やりたいこと」だって見つからず、特技や資格なんてないから、慣れた仕事のぬるま湯からなかなか抜け出せない。それなら結婚だ、と思って見合いを受けることにしたものの諦めから見合いを仕方なく受けたということを見抜かれてあっさりと断られてしまう。

その後、五歳年下の後輩と久々の恋に落ちるが、遊ばれて終わってしまう。皆が当たり前にしているように見える結婚して子供を産むってことがもしかしたら自分にはできないのではないか。仕事に生きるっていうバリバリのキャリアウーマンでもないのだし。すべて中途半端な自分に失望する日々。

自尊心を傷つけられ、落ち込んで、もがいて。けれど、そんな真緒をシングルマザーとして生きることを決意した友人のさつきや三度の離婚にもめげずに再び恋をしている母の存在がぐっと後押ししてくれる。30目前の一年をもがいて悩んで、それでも衣を脱ぐように自分をリセットして、一歩ずつ自分の足で前へと歩き始めた一人の女性の物語。

等身大の女性の生き方・考え方に女性ならきっと共感してしまう方も多いはずです!

感想

何もかもうまくいかない。自分って何にもないんじゃないか。女性として、人として生きることへの焦りや不安が襲ってくる真緒の気持ちに分かる!と共感する方も多いのではないでしょうか。

私も同じ女性として何度も頷き、真緒と一緒に心を痛めて、泣いて、怒ってと、非常に感情移入させられました。時代がひと昔前なので女性のキャリアに対する考え方や家庭での振る舞いなど変化している部分もあるのでは?と最初思ったのですが、むしろ「変わっていないこと」そして、「これからも多くの女性が変わらず悩み続けるであろうこと」の方が多いと感じましたね。

また、悩みやもがきの先に一人の女性が一歩ずつ前向きに歩いていく物語であるというところが私たちに勇気や安心感も与えてくれます。登場人物たちが、自分とはかなりかけ離れた存在であったり、偉業を成し遂げたりするのではなくて、現実に生きる私たちと同じ立場にいるというのがまた、背中を押されます。やっぱり唯川さんの本はたくさんの女性に読んでほしいなーと改めて思いました。

「でも今は、自分で自分に与えられるような気がする。幸福ばかりじゃなく、不幸も同じくらいの重さでね。何だか、自分が楽しみなのよ、これからどんなふうに生きてゆくんだろうって」

と真緒が最後に言えるようになる場面がすごく好きです。

 

不倫していた男との間に生まれた子を産んでシングルマザーになることを決意したさつきや夫に愛されたいという思いから仕事を始めてみたり別れたいなどと言ったりしてもがいている美枝子や実はいつだって真緒の味方でいてくれる友達みたいな母親。彼女たちの存在もとっても愛おしかったり、時にすごく頼もしかったり。真緒と母親の親子の在り方も素敵で気持ちがいいものです。いや、真緒のお母さん、本当に好き(笑)

 

唯川さんの作品、次は何を読もうかな。

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